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科学コミュニケーション

社会心理学は、様々な社会的場面に応用可能な知見を提出するポテンシャルを持っており、それがこの学問の魅力や価値を構成しています。

しかしその一方、過度の一般化や無責任な応用への提言が行われるとするなら、かえって、世間の役に立つどころか、有害な学問になってしまいます。その意味でも、正しく知見を伝えることを常に問いかけつつ(「正しいとは何か」という問いかけももちろん含みます)、研究を進めることは重要であり、科学コミュニケーションに関する研究に携わることは、その作業の一環として意味のあることだと考えています。

この問題について、「社会心理学的な概念」の再検討を実験哲学の知見も踏まえて行っています。 

1.  自由意志概念の再構築に向けて

自由意志信念が道徳的行動に及ぼす影響に関する研究知見に基づき、行動の決定因に関して「個人の自由意志や自律性」の肯定や否定、また脳、遺伝子、社会的要因などが行動を決めるとする決定論的なコミュニケーションが、自己制御や対人判断・道徳的行動に及ぼす影響を系統的に検討するプロジェクト。 その際、これまで行ってきた研究で示唆される、決定論的コミュニケーションへのリアクタンスの効果にも焦点を当て、自由意志や決定論的要因など、人間の自律性、行動統制にかかわる科学的な知見や概念をどのように構築し社会に伝達していくべきなのかという問いについて、社会心理学、分析哲学、社会学、法学などの学際的協同により考察・提言を行うことを目指しています。

2. 概念工学の可能性について 

名古屋大学・戸田山和久先生との共同プロジェクト。概念工学とは、われわれの生にとって、あるいは人類の生存にとって重要な諸概念を、よりよい社会やよりよい個人の生き方に貢献することが可能となるように、設計ないし改訂(つまりエンジニアリング)することを目指す研究領域です。社会心理学は、これまで、行動や現象を説明する心的機能や主観的状態、状況認知を「概念」として定めきましたが、「人に聞く」など、かなり素朴な手法をも多用しつつ構築し、操作や測定意用いてきました。しかし、これまで行ってきた概念構築は、本当に有効に機能しているのか、また何を志向して概念構築に取り組むべきなのかという問いに対して反省的に取り組む必要があります。社会心理学は科学知としてのみならず、実践知、人文知としての役割も持ち、人と社会の関係について、「より良い」あり方を検討し提案するための知である以上、概念を「良い方向に構築していく」という工学的な発想も必要であると考えています。そのために哲学者など他領域の研究者と共同し、実験哲学的な研究や、理論的議論の蓄積を進めています。

​関連資料

応用哲学会第7回年次大会ワークショップ発表資料 (2015年) 資料

日本グループダイナミックス学会第59回大会ワークショップ発表資料 (2012年) 資料

応用哲学会第3回年次大会ワークショップ発表資料 (2011年) 資料

​関連科研

  1. シンギュラリティと人類の生存に関する統合的研究 (基盤研究 (B):研究代表者 戸田山和久) 研究期間:2016~2019

  2. 社会心理学とフォークサイコロジーのあるべき生産的な関係に関する理論的・実証的検討 (科学研究費挑戦的萌芽:研究代表者 唐沢かおり) 研究期間:2012~2014

  3. 問題解決場面における社会心理学方法論拡張の可能性 (科学研究費挑戦的萌芽:研究代表者 唐沢かおり) 研究期間:2009~2011

  4. 科学画像の適切な使用に向けての基礎的・総合的研究  (科学研究費基盤研究 (B):研究代表者 戸田山和久) 研究期間:2011~2014

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